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美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

カテゴリー "美術" の記事

2018年回顧

至上の印象派展 ビュールレコレクション (国立新美術館)
スイスのコレクター、ビュールレによる印象派を中心としたコレクションの数々の展示。
日本国内でビュールレコレクションがまとまった形で展示されるのは最後となるとのことで、
この機会にじっくりと鑑賞した。
ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンベール嬢(可愛いイレーヌ)》は看板作品となっているだけあって、
瑞々しい美しさにあふれていた。

寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽 (サントリー美術館)
江戸時代初期、寛永年間につくられた「雅」な文化を紹介する展示。
「きれい、極まる。」のキャッチコピー通り、「綺麗な」作品が数多く展示されていた。
野々村仁清 《白釉円孔透鉢》のまるで現代アートのようなモダンな造形に驚かされたほか、
実際の着物を押し花のように屏風に貼りつけた《小袖屏風》が最も印象に残った。

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 (国立西洋美術館)
フェリペ4世時代を中心とした宮廷コレクションの数々を紹介。
ベラスケス作品が7点出展されていたが、やはり《王太子バルダサール・カルロス騎馬像》に圧倒された。

アラビアの道 サウジアラビア王国の至宝 (東京国立博物館 表敬館)
古代から20世紀に至るサウジアラビア王国の文化財を展示。
サウジアラビアといえばイスラムの聖地のイメージが強く、それ以前の歴史についてはほとんど知らなかったのだが、
イスラム以前にも豊かな文化が花開いていたことを知ることができた。

仁和寺と御室派のみほとけ ―天平と真言密教の名宝― (東京国立博物館 平成館)
仁和寺と仁和寺を総本山とする全国の御室派の寺院の名宝を集めた展覧会。
国宝・重要文化財も数多く展示されていた。
仁和寺の旧本尊《阿弥陀三尊像》(国宝)は平安時代初期に制作され、和様の先駆けとなった像とされている。
丸顔で穏やかな表情が個人的に好きな仏像である。
葛井寺《千手観音菩薩坐像》(国宝)は天平時代につくられた1001本の手を持つ真の千手観音像で、
1200年以上も完璧な造形のまま残っていることに驚かされた。
また仁和寺観音堂を再現した展示は圧巻だった。

ルドン -秘密の花園 (三菱一号館美術館)
「植物」に焦点を当ててルドンの画業を紹介する展覧会。
ドムシー男爵の城館の食堂装飾画16点の展示は
19世紀の様式で作られた美術館の展示室ともマッチして空間自体を楽しむことができた。
初期に描かれたモノクロの怪奇な花から晩年の豊かな色彩で描かれた幻想的な花まで、
ルドンの描く植物世界を満喫できた。

没後40年 熊谷守一 生きるよろこび (愛媛県美術館)
身近な対象を独自の画風で描いた画家の回顧展。
特に猫を描いた作品はシンプルな線と色彩ながら、猫のしなやかさ柔らかさ量感を的確に表現しており、
見ていて幸せな気持ちになれた。

描かれた「わらい」と「こわい」展 -春画・妖怪画の世界― (細見美術館)
国際日本文化研究センター(日文研)所蔵の春画・妖怪画コレクションの初めての展観。
一見恐ろしい妖怪画の笑える要素が含まれていたり、
思わず笑みがこぼれるような春画など、見ていて楽しい展覧会だった。

没後50年 藤田嗣治展 (京都国立近代美術館)
フランスを中心に活躍し、後年レオナール・フジタとしてフランスに帰化した藤田嗣治の回顧展。
初期から晩年にいたる藤田の軌跡を存分に見ることができた。
個人的に好きなのは美女や画家の横にさりげなく描かれた猫だ。
猫を見るのが楽しみだったといっても過言ではない。
特に《争闘(猫)》は一度実物を見てみたいと思っていた絵画作品の一つで、
猫の伸びやかさ、しなやかさ、瞬発力が的確に描かれていて、とても素晴らしかった。

京のかたな 匠のわざと雅のこころ (京都国立博物館)
京都国立博物館で初となる刀剣の特別展。
タイトル通り山城(京都を中心とした地域)鍛冶1000年の歴史をたどる内容で、
山城鍛冶の作品を中心に国宝・重要文化財も多数展示された。
これまで刀剣については鑑賞の仕方がよくわからなかったのだが、
歴史的背景や、刀剣以外の関連展示なども合わせて見ることによって、
理解できることが増えていくのが面白いと思った。

大名家と婚礼道具 ―資料から伝わる花嫁への想い (宇和島市立伊達博物館)
宇和島伊達家歴代の藩主夫人が輿入れの際に持参した調度や、
伊達家の姫君が他家へ嫁ぐ際に持参した調度などを展示。
丁寧にあつらえられた調度品の数々に大名家の花嫁への想いを感じることができた。

2019年も行きたい展覧会が色々とある。
出来れば一つでも多く行きたいものだ。
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展覧会回顧2017

2017年もあと少しになりましたが、今年もいろいろな展覧会を見に行きました。

百段雛まつり 九州 ひな紀行Ⅱ 目黒雅叙園「百段階段」
九州各地の雛人形と「百段階段」の絢爛豪華な空間のコラボレーションが見事な展示でした。
百段階段は一度見てみたい場所だったのですが、想像以上の素晴らしさでした。

マリー・アントワネット展 森アーツセンターギャラリー
マリー・アントワネットの生涯を肖像画などの絵画作品をはじめ、愛用の工芸品、
さらには居室などの空間を再現して紹介する展示でした。
展示品一つ一つを鑑賞するというよりも、全体を見て王妃のすべてを体感するという雰囲気の展覧会だったと思います。

春日大社 千年の至宝 東京国立博物館
現地へ行ってもこれだけ一度には見られないであろう春日大社の神宝の数々、
また現地でも拝観できない春日大社の本殿の一部を再現し、実際の壁画の展示を行うなど、
文字通り春日大社千年の歴史を感じる内容でした。
個人的に好きな展示品は《金地螺鈿毛抜形太刀》です。
雀を狙う猫の姿が生き生きと表現された螺鈿細工に見入ってしまいました。
また《赤糸威大鎧(梅鶯飾)》は繊細な梅に鶯、蝶の金物細工に惹きつけられました。
鎧をこれほどじっくり見たのは初めて位に丹念に鑑賞しました。

ティツィアーノとヴェネツィア派展 東京都美術館
ティツィアーノをはじめとしてティントレット、ヴェロネーゼなど
ヴェネツィア派を代表する画家たちの作品の量感や色彩の豊かさに感銘を受けました。

招き猫亭コレクション 猫まみれ展 尾道市立美術館
「招き猫亭」と称する個人コレクターによる古今の芸術作品になった猫たちの展覧会。
一言で言うなら「見ているだけで幸せな気持ちになれる」展覧会でした。
また尾道市立美術館のTwitterアカウントがとても楽しかったです。(黒猫と警備員の攻防戦が面白い)

細見美術館名品展 愛媛県美術館
「若冲、琳派、かざりと雅」と題し、
京都・細見美術館を代表するコレクションである琳派と若冲作品を中心とした展覧会。
細見美術館で一度には見られないであろうラインナップを松山で見られたのは貴重な機会だったと思います。
同時期に細見美術館では愛媛県美術館のコレクションによる杉浦非水の展覧会が開催されており、
興味深い取り組みだと思いました。

ウェールズ国立美術館所蔵 ターナーからモネへ 愛媛県美術館
19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスおよびフランス絵画の展覧会。
展覧会の目玉はヴェネツィアの黄昏の情景を虹色で描いた、モネ《サン・ジョルジョ・マッジョーレ 黄昏》でしたが、
私はロセッティ《麗しのロザムンド》を見るのが目的で行きました。
色彩も質感も写真で見るよりもずっと美しく、髪など櫛がするすると通りそうなほどでした。

伊達×刀剣 ―武家の宝物と五箇伝の名刀― 宇和島市立伊達博物館
宇和島伊達家伝来の刀剣、甲冑、馬具のほか、伝来の様々な刀剣の数々の展示でした。
私が記憶している中では刀剣に特化した展示は伊達博物館では初めてであったと思います。
八幡神社(宇和島市)に奉納された三尺八寸五分の太刀の大きさに圧倒されました。
もう少し刀剣の鑑賞の仕方を学んでから見ればもっと楽しめるだろうと思いました。

末法/APOCALYPSE -失われた無石庵コレクションを求めて 細見美術館
「末法」をテーマに、奈良時代から南北朝時代にかけての仏教美術を展示。
「美」とは何かを問いかけているような内容で、
同時期に京都で開催されていた国宝展のある意味アンチテーゼともいえる展覧会でした。

特別展覧会 国宝 京都国立博物館
京都国立博物館開館120周年記念の展覧会で展示作品すべてが国宝という展覧会。
私が行ったのはⅢ期でこのときの一番の目玉は《金印》で、
写真で見るとごつごつした印象でしたが、実際はとてもつややかだったのが意外でした。
展示品の中で一番好きだと思ったのが《扇面法華経冊子》で
公達と姫君や子供たちの姿が愛らしくて素敵でした。
展示品のパワーに圧倒されて見るのに体力が必要な展覧会でした。

レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展 愛媛県美術館
フィレンツェ、シニョリーア宮殿(現・ヴェッキオ宮殿)に
かつてレオナルドが描いた壁画《アンギアーリの戦い》に迫る展覧会。
著名画家の作品はほとんどありませんでしたが、
《タヴォラ・ドーリア》と呼ばれる板絵を中心に様々な観点から
今では幻となった壁画にアプローチする意欲的な内容でした。

2016年今年見た展覧会

今年2度目のブログ更新が今年最後のブログ更新になってしまいました。(汗)

2016年は多忙だったこともあり、あまり展覧会には行きませんでした。
2月に東京へ1泊2日で行ったほかは、県内の展覧会2つに行っただけです。

ゆかいな若冲・めでたい大観―HAPPYな日本美術―  
1月3日~3月6日 山種美術館
表題通り楽しくユーモラスな日本美術ばかりの展覧会でした。
特に歌川国芳『猫飼好五十三疋』の実物を始めてみることができてよかったです。

松竹梅 新年を寿ぐ吉祥のデザイン
1月9日~2月14日 根津美術館
新春にふさわしい縁起の良いモチーフを用いた作品の展示でした。
私が一番好きだったのは同時開催の『百椿図』展示です。
描かれた椿のあしらいがどれもおしゃれで、現代のインテリアにも似合いそうでした。

ガレの庭 花々と声なきものたちの言葉
1月16日~4月10日 東京都庭園美術館
ガレのガラス器の数々がアール・デコの邸宅に溶け込むように展示されていて、
まさしく「ガレの庭」といった雰囲気でした。

英国の夢 ラファエル前派展
2015年12月22日~2016年3月6日 Bunkamuraザ・ミュージアム
開催を知ってから本当に楽しみにしていた展覧会です。
過去に見たことのある作品もいくつか展示されていたのですが、
一番印象に残ったのがバーン=ジョーンズ『スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)』です。
20年ほど前に輸入ポストカードを見て一目ぼれして、一度実物を見てみたいと思っていた作品でした。
現物は予想以上の大きさで迫力に圧倒されると同時に、繊細な描写がとても美しいと思いました。

ボッティチェリ展
1月16日~4月3日 東京都美術館
こちらも開催を知ってぜひ行きたいと思った展覧会です。
日本国内でボッティチェリ作品がこれだけまとまった形で展示される機会は今後そう無いのではと思います。
私は昔ウフィツィ美術館で『ヴィーナスの誕生』を見たのですが、その時思わず涙ぐんでしまいました。
絵画作品を見て涙を流したのは後にも先にもその時限りです。

始皇帝と兵馬俑
2015年10月27日~2月21日 東京国立博物館 平成館
兵馬俑の大きさと細部まで丁寧に作られていることに驚きました。
展示の仕方も工夫を凝らしたもので興味深かったです。

三井家のおひなさま
2月6日~4月3日 三井記念美術館
江戸後期から明治・大正・昭和初期の三井家のおひなさまの数々が展示されていました。
私の祖母(明治41年生まれ)のひな人形は日本橋の三越から取り寄せたもので、
木箱には「東京下り」と記されています。
そのためこちらの展覧会は大変興味深く見ました。

第二十回企画展 永青文庫コレクション 中国 古代の造形
2015年12月19日~2016年3月13日 羽田空港美術館 ディスカバリーミュージアム
中国西周時代~唐時代にかけての銅器や陶器の展示でした。

太閤さん、おかえりなさい―光信と桃山期・江戸初期の狩野派―
4月23日~5月15日 宇和島市立伊達博物館
宇和島伊達家伝来の豊臣秀吉像(狩野光信筆:重要文化財)を中心に
桃山期・江戸初期の狩野派の絵画の展示でした。

いつだって猫展
9月28日~11月6日 愛媛県美術館
2015年に名古屋で開催された展覧会で、愛媛での開催を知って絶対に行こうと思ったものです。
浮世絵の猫も招き猫も、どの猫もとても表情豊かで
猫の魅力を存分に味わうことのできる展覧会でした。

山口晃展 松山シフト
9月1日~11月20日 愛媛県美術館
「道後アート2016」のメインアーティスト山口晃の作品展です。
道後・松山にまつわる作品を中心に、学生時代の作品から近作まで幅広く展示されていました。

2017年にも見たい展覧会が数多く開催されます。
出来れば機会を作って行きたいものだと思っています。

回顧2015年の展覧会

2015年は5月に東京、11月に京都へ展覧会を見に行きました。

和歌と絵画
 五島美術館 4月4日~5月10日
五島美術館の館蔵品より和歌に関する書画を展観。
私は書については全くの素人で、どのように鑑賞すればよいかわからないのですが、
字形の面白さ、料紙の美しさを見ていました。
同時に開催されていた源氏物語絵巻はぜひ一度見てみたいと思っていたもので、
繊細な描写に心惹かれました。
また復元模写の鮮やかな色彩に往年の絵巻はこのようなものであったのかということを実感できました。

燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密
 根津美術館 4月18日~5月17日
尾形光琳300年忌を記念して開催された展覧会。
国宝『燕子花図屏風』『紅白梅図屏風』が56年ぶりに同時展示されました。
高度にデザイン化された燕子花によって「伊勢物語」の一場面を表現した『燕子花図屏風』、
光琳デザインの到達点といえる『紅白梅図屏風』の二つを見比べることができるとてもよい機会が持てました。

ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美
 Bunkamura ザ・ミュージアム 3月21日~6月28日
ボッティチェリ作品17点(工房作など含む)を中心にフィレンツェのルネサンスについて展観。
フィレンツェのルネサンスは金融業によって生み出された富によって育まれた美であることがよく理解できる内容でした。

よみがえるバロックの画家 グエルチーノ展
 国立西洋美術館 3月3日~5月31日
イタリア・バロック美術を代表する画家グエルチーノの国内初の回顧展。
今まで名前しか聞いたことがなかったのですが、(作品を意識して見たことがなかった)
数々の大作に圧倒され、バロック芸術の真髄に少しは触れることができたように思えます。

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
 三菱一号館美術館 2月7日~5月24日
ワシントン・ナショナル・ギャラリーの印象派コレクションよりテーマ別に展示。
これまでに見たことのある作品も含まれていましたが、
19世紀の建築を再現した空間で鑑賞する19世紀絵画というのは格別な味わいでした。

フェルメールとレンブラント 世界劇場の女性
 京都市美術館 10月24日~2016年1月5日
感想はこちら
「世界劇場の女性」という副題は京都展独自のものということを見に行ったあとで知りました。

琳派イメージ展 
 京都国立近代美術館 10月9日~11月23日
琳派400年を記念し、琳派の影響を受け近代~現代の作家たちが生み出した作品を紹介。
一見して琳派オマージュとわかるものから、これも琳派の影響を受けたものなのかという意外なものまであり、
琳派がそれ以降の日本美術に与えた影響の大きさがわかりました。

MIHO MUSEUM所蔵 琳派のやきもの 乾山
 細見美術館 9月19日~11月23日
琳派400年記念祭の一環として開催された展覧会。
尾形乾山の様々なやきものが陳列されていましたが、
特に興味深かったのが実際に乾山の器に料理を盛り付けた様子の写真です。
これらの器が観賞用ではなく、実用品として作られたということがよくわかるものでした。

琳派 京を彩る
 京都国立博物館 10月10日~11月23日
感想はこちら

私はもともと西洋美術史専攻で(特に好きなのが世紀末象徴主義やラファエル前派。初期ルネサンスも好き)
以前は見に行く展覧会といえばほとんどが西洋美術の展覧会でした。
今でももちろん西洋美術は好きですが、ここ数年日本美術への興味が強くなっています。
今年は琳派400年ということもあって、琳派関連の展覧会へ多く行きました。
これまであまり知らなかったことを一つ一つ知っていくのはとても楽しいことで、
展覧会を見る楽しみがまた一つ増えたような気がします。

琳派 京を彩る

琳派 京を彩る
10月10日~11月23日 京都国立博物館 平成知新館

1615年、本阿弥光悦が鷹峯の地を拝領し、光悦村を開いたことから
今年は琳派誕生400年とされています。

「琳派」を総合的に展観する展覧会が京都で開催されるのは今回が初めてで、
光悦・宗達・光琳・乾山・抱一と
世代を超えて受け継がれた美意識によって生み出された芸術品の数々が勢揃いしていました。

第1章 光悦 琳派誕生
書状、楽茶碗などで光悦の足跡をたどる構成となっていました。
光悦筆・立正安国論(妙蓮寺所蔵)や光悦作・花唐草螺鈿経箱(本法寺所蔵)など、
光悦と法華宗との深いつながりを示すものもありました。

第2章 光悦と宗達 書と料紙の交響
書家としての光悦は王朝風の華麗な下絵が描かれた料紙を用いた巻物や色紙を多く手がけました。
それらの料紙に下絵を描いたのが俵屋宗達です。
光悦筆・宗達画の和歌色紙や巻断簡を中心に展示されていました。
特に見ごたえがあったのは『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』で、
金泥の地に描かれた銀色の鶴の群れは躍動感にあふれています。
鶴たちは存在感がありながらも決してしたためられた文字の妨げになっておらず、
章タイトルの通りの絶妙なハーモニーを醸し出しています。

第3章 宗達と俵屋工房
宗達は「俵屋」という屋号で工房を構えていたと考えられています。
始め俵屋では扇絵を手掛けていましたが、
次第に屏風絵、襖絵、杉戸絵などの大型の絵も描くようになっていきました。
『扇面散屏風』(伝宗達筆)
物語の一場面や、名勝を描いた扇絵を屏風に張り付けたもので、
それぞれの場面は独立したものですが、全体は見事に調和を保っています。
『芥子図屏風』
写実的に描かれた芥子の花がモダンな雰囲気で洋間にも似合いそうでした。
『菊簾図屏風』
簾が屏風にはめ込まれており、
残りの空間に巧みに菊の花が描かれています。
菊花は極めて厚塗りで仕上げられていて本物の花のようでした。
『色絵芥子文茶壺』(野々村仁清作)
茶壺といえば茶色のシンプルなものが多いのですが、
こちらは赤や紫・金色の芥子の花々が描かれた華やかなもので、
絵画をそのまま壺にしてしまったかのようでした。

第4章 かたちを受け継ぐ
琳派は直接の師弟関係を持たず、遺された作品を通じて世代を超えて継承されました。
それを端的に表すのが、宗達・光琳・抱一の『風神雷神図屏風』です。
光琳は宗達の風神雷神図を写し、抱一は光琳の風神雷神図を写しました。
また酒井抱一は光琳の『三十六歌仙図屏風』を模写しただけではなく、
四季の花々を描いた屏風に三十六歌仙の肖像と和歌の色紙を張り付けた
『三十六歌仙図色紙貼交屏風』も制作しています。

第5章 光琳 琳派爛漫
琳派誕生から約100年後の元禄時代に活躍したのが尾形光琳です。
光琳は宗達以来の装飾的なやまと絵の技法と
雪舟の水墨画や狩野派の豪壮な画風を融合した独自の様式を確立しました。
大胆な構図の『白楽天図屏風』
繊細な筆致と伸びやかな構図の『夏草図屏風』
対象を写実的に写し取った『鳥獣写生絵巻』からは光琳の観察眼を感じ取ることができます。
『竹虎図』は画面の半分を猫のような愛らしい虎が占めています。
虎の量感から衝立のような大きめの絵画を連想していたため、
この作品の実物を見たとき意外に小さいことに驚きました。

第6章 くらしを彩る
琳派の芸術家たちは金工・漆芸・陶芸など様々な暮らしを彩る工芸品を生み出しました。
作り出した工芸意匠はその後の芸術にも多大な影響を与えています。
『八橋蒔絵螺鈿硯箱』(尾形光琳作)
螺鈿で形作られた杜若の花、金蒔絵の杜若の葉、黒漆の八橋
具体的な情景描写は一切用いずに伊勢物語の東下りの段を表現しています。
『色絵氷裂文角皿』(尾形乾山作)
20世紀抽象画を思わせる図案が斬新です。
『色絵菊図向付』(尾形乾山)
白い小菊の形に作られた愛らしい器です。

第7章 光琳の後継者たち 琳派転生
光琳は直接後継者を育てることはありませんでしたが、
その画風を慕って多くの画家が活躍することとなりました。
中でも酒井抱一は光琳の画業を顕彰し、琳派の系譜を初めて明確に跡付けました。

琳派の様式は江戸時代を通じて代々受け継がれただけではなく、
近代以降も多くの芸術家が「琳派デザイン」の影響を受けています。
今も息づく琳派の系譜をじっくりと鑑賞できる内容で大変見ごたえのある展覧会でした。