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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2007年06月の記事

六月の花嫁 vol.4 雅歌


モロー 雅歌 1893


夜ごと、ふしどに恋い慕う人を求めても
求めても、見つかりません。
起き出して町をめぐり
通りや広場をめぐって
恋い慕う人を求めよう。

求めても、あの人は見つかりません。
わたしが町をめぐる夜警に見つかりました。
「わたしの恋い慕う人を見かけましたか。」

彼らに別れるとすぐに
恋い慕う人が見つかりました。
つかまえました、もう離しません。
母の家に
わたしを産んだ母の部屋にお連れします。

「雅歌」より


旧約聖書「雅歌」はヘブライ語では「歌の中の歌」と呼ばれます。
それらの「歌」は花嫁の恋人への愛を謳いあげた相聞歌で、
大らか、かつ大胆に恋愛を歌ったものもあります。
後にこれらの歌の「花嫁」や「恋人」は
教会や聖母マリアを象徴するものと考えられるようになりました。

モローの『雅歌』は
愛しい人を求めて町をさまよう乙女の姿を描いたものです。
この作品は私が初めて実物を見たモロー作品ですが、
水彩で繊細に描き出された黄昏の情景や
オリエンタルな美を醸し出す女性像に一目で心惹かれました。



バーン=ジョーンズ レバノンの花嫁 1891


花嫁よ、レバノンからおいでおいで、レバノンから出ておいで。
アマナの頂から、セニル、ヘルモンの頂から、獅子の隠れが、豹の住む山から下りておいで。

わたしの妹、花嫁よ、あなたはわたしの心をときめかす。
あなたのひと目も、首飾りのひとつの玉も、それだけで、わたしの心をときめかす。

わたしの妹、花嫁よ、あなたの愛は美しく、ぶどう酒よりもあなたの愛は快い。
あなたの香油は、どんな香り草よりもかぐわしい。

花嫁よ、あなたの唇は蜜を滴らせ、舌には蜂蜜と乳がひそむ。
あなたの衣はレバノンの香り。

わたしの妹、花嫁は、閉ざされた園。閉ざされた園、封じられた泉。
ほとりには、みごとな実を結ぶざくろの森、ナルドやコフェルの花房


北風よ、目覚めよ。
南風よ、吹け。

わたしの園を吹き抜けて
香りを振りまいておくれ。

恋しい人がこの園をわがものとして
このみごとな実を食べてくださるように。

「雅歌」より


1870年代に刺繍のデザインとして取り上げたこの主題を改めて水彩したものです。
百合の花咲く小川のほとりを風の精に誘われて歩く花嫁の姿です。
青い衣裳が「北風」明るい衣裳が「南風」でしょうか?
この風の精の姿や作品全体の流麗な線描はボッティチェリの影響によるものです。

後に「レバノンの花嫁」の詩句「閉ざされた園」「封じられた泉」は
聖母マリアの処女性を象徴するものとされました。



ロセッティ 最愛の人 1865-66


おとめたちの中にいるわたしの恋人は
茨の中に咲きいでたゆりの花。

「雅歌」より


この作品は初め『ベアトリーチェ』として描き始められましたが、
中央の女性のモデルの顔の色艶があまりに健康的で美しかったため
雅歌の花嫁に主題変更されたものです。
中央の花嫁の輝くような肌色をはじめ、
五人の女性たちの微妙な肌色の違いが巧みに表現されています。


「雅歌」の謳いあげる豊饒なる愛の世界は
峻厳なイメージの強い「聖書」の持つ別の側面を感じさせてくれます。
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