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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2008年03月の記事

フローラ vol.6―花のように



19世紀末から20世紀初頭のフランスの画家ルイーズ・アベマの『フローラ』です。

ここに描かれているのは神話の女神ではなく、遊女や貴婦人の姿でもない
「花のように」美しく生き生きとした女性の姿だと思います。
彼女は花の盛りを文字通り謳歌しているようです。


「フローラ」シリーズはここで完結とさせていただきます。
私の住む地域では、桜の開花以降寒い日が続いておりますが、
もうすぐ本当の春がやってくることと思います。

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フローラ vol.5―花を摘む乙女


ウォーターハウス フローラ


上の作品は郡山市立美術館所蔵のもので、
日本国内の美術館で見ることの出来る唯一のウォーターハウス作品です。

20世紀初頭から第一次世界大戦中までウォーターハウスは
花を摘む少女を描いた一連の作品を制作しました。
1902年に制作された『Windflowers』は、このシリーズの最初の作品です。



春(花を摘む人)

これらの作品は一心に花を摘む乙女の姿を牧歌的な風景の中に描くという
特定の主題のない唯美主義的な作品に見えますが、
実はペルセポネの神話を土台に描かれたものといわれています。
『フローラ』で乙女が摘んでいるのは水仙ですが、
水仙はペルセポネがハデスによって冥界に連れ去られたときに摘んでいた花です。



水仙

ウォーターハウスはペルセポネを冥界の女王としてではなく、
黄泉の王すら魅了する美と豊饒の化身として表現しました。
ラスキンはペルセポネを「ギリシアのフローラ」と呼んでいます。
地面から芽を出し「死者が墓から蘇るように、再び生命を得る」植物は
春の訪れと共に冥界から帰還するペルセポネに重ねあわされたのです。



薔薇の蕾は摘めるうちに摘め

ウォーターハウスがフローラ(ペルセポネ)を描くようになったのは60歳を過ぎた頃からです。
老境を迎えた彼は「死」を強く意識するようになっており、
それゆえに「死と再生」を象徴するペルセポネに心惹かれたようです。



春の歌

『春の歌』は一連の「ペルセポネ」よりも後に描かれたものです。
子供たちを連れた母親が野で花を摘む姿には
たくましさと満ち溢れる生命力を感じます。

花見(BlogPet)

きのうは千露は天気は花見するはずだったの。

*このエントリは、ブログペットの「さつき」が書きました。

大正花物語展

宇和島市立歴史資料館で開催されている「『華宵の部屋』第8回展示『大正花物語展』」を見ました。

宇和島市立歴史資料館では同市出身の高畠華宵の作品を
2006年からテーマ別に「華宵の部屋」と題して展示しており、
今回は花をテーマにした作品を中心にした展示でした。

桜、鈴蘭、雛罌粟、紫陽花、百合など季節ごとの花々と共に描かれた
和装の娘や断髪のモダンガールの美しさにしばし見入っていました。
(雛罌粟を背景に黒猫を抱いた女性の描かれた『仔猫』が気に入りました)
華宵の作品のほか、大正時代のリボンや伊達襟、ショールなどの服飾品、
昭和初期から昭和30年代初頭の少女小説や少女雑誌を用いて
女学生の机を再現した展示など、
展示作品数はそれほど多くはないのですが、
明治時代に建てられた擬洋風建築と華宵の作品がぴったりとあっていて
時を忘れてレトロな世界に浸ることが出来ました。

華宵は花の中でも薔薇を一際愛したそうで、
薔薇と乙女を描いた作品を取り上げて展示してありました。
「華宵と薔薇」という展示解説によると、
愛の女神の象徴であると同時に聖母マリアの純潔の象徴でもあるという
相反するイメージを持つ薔薇の花に
モダンガールが登場し、女学生たちの少女文化が花開く一方、
貧困のため満足な教育も受けられなかったり、封建的な社会に抑圧されていた
大正時代の女性の姿を重ね合わせていたのではないかとありました。

「薔薇のように」美しい女性たちと、薔薇の象徴するものに
深い感銘を受けた展示でした。

華宵のおしゃれ教室―麗し乙女のロマンチック・バイブル
こちらの本の表紙に今回展示されていた作品の一つが用いられています。

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お花見 (今日のテーマ)

BlogPet 今日のテーマ お花見
「今年はお花見やりますか?やるとしたら何日で考えてますか?」
「花見」といってもいわゆる宴会ではなく、
自分の住んでいる場所のあちこちの桜を見て歩く
「おひとり様花見」をしようと思っています。
本当にただ「花」を「見」るだけの予定です。

ギリシア神話検定

lapis様のところで面白い検定を発見したので
早速やってみました。

ギリシア神話検定

千露さんのギリシア神話検定は、 88 点です。


ランク: A (A~E)

偏差値: 68.4

順位: 161位 (3,582人中)

総評
たいへんよくできました。そこいらの欧米人より詳しいかもしれません。ギリシア神話に精通していると言ってもよいでしょう。


千露さんのラッキーアイテム:

銀の弓

私は小学生の頃星座に興味を持って、そこでギリシア神話に出会いました。
母が「紀元前」の物語(古代エジプトや旧約聖書の物語など)が好きなこともあって、
この手の物語に大変親しんで育ちました。

これは私が大人になってからの話ですが、
母はマンガ ギリシア神話 里中 満智子:著 がどうしても読みたくて
市立図書館にリクエストしたのですが、
図書館では学習漫画以外は購入しないとの方針のため、
結局自分で書店に注文して全8巻をハードカバーで揃えました。
(私ではなく母が買ったものです)

ラッキーアイテムの「銀の弓」について調べてみましたが、
女神アテナの持物であることが分かりました。
美しく賢く勇ましいアテナ女神に遠く及ばない人間の私ですが、
このアイテムに恥じない者に近づきたいです。



クリムト『パラス・アテナ』です。
古典絵画に登場する美しい処女神としてのアテナというよりも
猛々しく人の運命を支配する「ファム・ファタル」としてのアテナのようです。

フローラ vol.4―女神の肖像


ナティエ フローラに扮したマリー・アデライード 1742


ルイ15世時代の宮廷肖像画家として活躍したナティエの代表作です。
彼は上の作品のように宮廷の貴婦人を
ギリシア・ローマ神話の女神やニンフに見立てた
「神話的肖像画」を数多く描き、大いにもてはやされました。
ここでフローラに扮しているのはルイ15世の王女の一人です。
実際のマリー・アデライードは格別な美女ではなかったようですが、
この作品では実に優雅に美しく描かれています。

ルネサンス時代には「フローラ」は
高級娼婦を描くための口実としての一面がありましたが、
後にそれは薄れ、貴婦人や画家の妻・恋人を描くために
「花の女神」の姿が用いられるようになりました。


17世紀スペインの画家の作品で、
貴婦人をフローラに見立てたものとしては早い例です。
花に囲まれた宮廷の礼装をした貴婦人が従者に花を捧げられています。


レンブラントが妻サスキアをフローラとして描いた作品です。
新婚間もない頃に描かれたもので、
彼女のポーズには子宝に恵まれることを願う意味がこめられています。


こちらもレンブラントの作品ですが、
上の少女のような面持ちのフローラに対し、
堂々たる貫禄を見せる姿はまさに豊饒の女神にふさわしいものです。

マリー・アントワネットの肖像画家として名高いヴィジェ=ルブランの作品です。
古典的な衣裳を身につけ、花かごを頭上に掲げる乙女の姿は非常に優雅です。



18世紀ヴェネツィアの女性画家カリエラの『フローラ』です。
彼女はパステルによる肖像画を得意とし、これも女神に見立てた肖像画と思われます。
胸を露わにするポーズはルネサンス時代の「フローラ」を思わせますが、
妖精のように軽やかな雰囲気はロココならではといえるでしょう。

バロック・ロココ時代に数多く描かれた「見立て肖像画」は
19世紀に入ると廃れていきます。
「女神のような」貴婦人たちの時代にぴったりと沿ったのが「フローラの肖像」だったのでしょう。

○○タワー (今日のテーマ)

BlogPet 今日のテーマ ○○タワー
「東京タワーに京都タワー全国各地にいろんなタワーがありますが、あなたが行ったことのあるタワーを教えてください。行ったことのない人は行きたいタワーを教えてください。」
高校の修学旅行のとき、東京での昼食場所が東京タワーでしたが、
昼食のみだったので、展望台へは登りませんでした。
京都タワーは外観を見たことがあるだけで、中へ入ったことはありません。
他に行ったことがあるのは地元近くにある回転展望タワーくらいです。

窓の外は? (今日のテーマ)

BlogPet 今日のテーマ 窓の外は?
「突然ですが今日のあなたの住んでるところの天気は何ですか?」
雨です。
今日は一日雨でした。
近頃はあまりまとまった雨が降らないので、雨は必要なのですが、
一日しとしと降り続けると、なんとなく沈んだ気分になります。

フローラ vol.3―花を持つ女


ティツィアーノ フローラ 1515頃


ティツィアーノの初期の代表作で、
「フローラ」を描いた絵画の中で最も有名なものの一つです。
豊饒の女神にふさわしく豊かな量感と穏やかな表情の女性像です。
右手に持つ花は彼女が「花の女神」であることを示しています。



レオナルド晩年の愛弟子メルツィの作品です。
かすかに微笑むフローラの表情に師匠の影響を強く感じます。
花の女神を描いた作品としてはあまりに静謐で、どこか神秘的なものを感じます。



こちらもレオナルドの影響を受けた画家の作品です。
表情やポーズは『モナリザ』をなぞったものです。
『モナリザ』の持つ秘めたエロティシズムを露わにした
「裸のモナリザ」の一つと言えるでしょう。



バルトロメオ・ヴェネトの謎めいた作品です。
この作品のモデルは一説にはルクレツィア・ボルジアであるとも言われていますが、
花を手にしていることからフローラを描いたものであるとも言われます。
一般的にフローラは豊満な肉体で描かれることが多いですが、
こちらの女性はむしろ中性的ともいえる肢体をしています。
彼女が手に持つ花はアネモネ・マーガレット・金鳳花で、
それぞれマドンナ、貞淑、狂気を象徴しています。
彼女は「狂気」を手にしているというところが大変興味深い点だと思います。



ヴェネツィア派の画家パルマ・イル・ヴェッキオの『女の肖像』です。
彼はこの作品に見られるような豊満な女性像を何点も描いています。
こちらも花を手にしているところから『フローラ』とも呼ばれています。

これまで見てきた「フローラ」たちに共通する点があります。
彼女たちはいずれも胸を露わにした姿で描かれていることです。
この胸を露わにしたポーズは
モデルがコルティジャーナと呼ばれた高級娼婦であることを暗示しています。
当時「フローラ」はコルティジャーナの源氏名としても多い名前でした。
春の女神の持つ官能性が春をひさぐ女たちに重ねあわされたものが
これらの「フローラ」であるといえるでしょう。



北方マニエリスムの画家ヤン・マセイスの『フローラ』です。
マセイスは神話や聖書の物語を借りた妖艶な女性像を多く描いています。
イタリアのフローラたちの豊饒な美しさとは対照的な
冷ややかな官能性に満ちた作品です。