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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2008年04月の記事

リリス Famme Fatale vol.4


ジョン・コリア リリス 1887

キーツの詩にインスピレーションを受けて描かれたものといわれます。
『つれなき美女』『レイミア』などキーツの詩に登場する女たちは
男を誘惑し破滅させる女=ファム・ファタルの原点とされています。

リリスとはユダヤの民間伝承に現れる魔女で、
赤子を攫ったり若い男の生き血を啜ると考えられています。

旧約聖書偽典においてリリスはアダムの最初の妻として登場します。
リリスはアダム同様土を固めて造られました。
彼女はアダムに従順な妻ではなかったため、
神の罰を受け、悪魔として楽園を追放されました。
また彼女自身が楽園を捨てて去っていったともいわれています。
その後神はアダムのあばら骨からエヴァを造りますが、
彼女は蛇の誘惑に屈しアダムと共に楽園から追放されることとなります。
エヴァを誘惑した蛇はしばしば女の顔で表されますが、
純真なエヴァにそれまで彼女が知らなかった快楽を教えた張本人こそ
リリスであるとも考えられています。

コリアの描くリリスは
惜しげもなく裸身を晒し、大蛇の与える愛撫に身をゆだね
恍惚とした表情で愛しげに蛇を抱き寄せています。
官能的な女が悪魔と情を交わす不吉な存在として表されたのは
男性の女性に対する渇望と拒否の感情を
同時に表現するためといわれています。

薔薇と芥子が彼女の花、おおリリスよ、
 香りを漂わせ そっと口づけし 優しい
眠りの罠にかける男は見つかったか、
ロセッティ『リリス』より


ロセッティ レディ・リリス 1868

ロセッティの描いた女性像の中でも官能的なものの一つです。
『レディ・リリス』については以前HPにUPしましたので
そちらをご参照いただきたいのですが、
ロセッティは友人に送った手紙の中で
邪悪で危険な女の本性を暴き出すために
鏡を見て化粧するリリスを描いたと述べ、
また単なる神話の登場人物としてではなく
同時代の魅惑的なエロティックな美女を描いたといっています。

世紀末に数多くのファム・ファタルが生み出された理由の一つに
女性の権利が主張されるようになり、
伝統的な価値観が大きく崩れていったことが上げられます。
古い価値観の崩壊に男性は恐れと反感を抱きますが、
同時に女性に対する渇望も強く存在しました。
そういった感情がファム・ファタルを造り上げたのです。

リリスは女性の破壊的な力を象徴する存在とされ、
男性を挑発し破滅させる妖婦であるといわれていますが、
アダムと対等な存在であることを望み
その望みが叶わないとなると自ら楽園を去って思うが侭に生きたリリスは
自分の生きる道を自分で選ぶことのできる自我を持った女であるのだと思います。
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