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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2008年08月の記事

メッサリナ Famme Fatale vol.6


モロー メッサリナ 1874頃


メッサリナは1世紀のローマ皇帝クラウディウスの后でしたが、
皇帝に対し陰謀を企み死罪となりました。

彼女は権勢欲と虚栄心が強かっただけではなく、奔放なことでも知られ、
皇后でありながら娼婦としてローマの下町で客を取っていたと伝えられます。

モローの作品ではメッサリナは若い船頭を誘惑し、
自分の欲望を遂げた後は容赦なく若者を死へ追いやるという
残忍な妖婦そのものとして表現されています。
懇願する若者を一顧だにしない冷酷な姿は
モローの描いた多くのファム・ファタルたちの中でも
一際恐ろしい女性に感じます。
モローは『メッサリナ』は女性の飽くなき肉欲を描いたものであり、
背後で松明を持つ運命の女神パルクによって表されているのは
放蕩は死へ至るという若い男性への教訓であると述べています。


ビアズリー メッサリナ 1897

モロー描くメッサリナが皇后としての気品を備えているのに対し、
ビアズリー描くメッサリナは欲望と本能を露わにした姿です。
この作品が描かれたヴィクトリア時代の英国では
「性」について表現することはタブー視されていましたが、
ビアズリーは独創的な様式でエロスを描き出し、
その後のグラフィックアートの世界に大きな影響を与えました。


ロートレック メッサリナ 1900-01

ロートレックは1900年にボルドーでオペラ「メッサリナ」を見て、
メッサリナの連作に取り組みました。
こちらはその中の一枚で、メッサリナが階段を下りてくる場面です。
彼女の身につけている赤い服は飽くことのない欲望を情熱の象徴です。
高慢な表情や堂々たる体躯から彼女の溢れるような生命力を感じ取れます。
この作品を描いた頃のロートレックはアルコールの影響や持病の悪化で死を目前にしていました。
最後の力を振り絞って描いたのが、男の欲望に火をつける魅惑的な妖婦メッサリナだったのです。

メッサリナは自分の欲望に忠実に生き、そのために命を落とすこととなりました。
彼女の行いは決して正しいものではありませんが、
自分の人生を自分の意思で歩むことの出来た、
ある意味幸福な女性なのかもしれません。
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