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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2008年09月の記事

フェルメール展 その1

9月5日にフェルメール展「光の天才画家とデルフトの巨匠たち」(東京都美術館)を見てきました。

今回の展覧会では7点のフェルメール作品を始めとして、
フェルメールと同時代に活躍したデルフトの画家たちの作品が紹介されています。

展覧会の構成は
●フェルメール以前のデルフトの画家
●フェルメールの作品
●フェルメール以後のデルフトの画家 のようになっていました。

最初に展示されていたのはデルフトの景観図や教会内の景観図です。
教会内の景観図は17世紀オランダで独自の発展を遂げた分野で
一見本物の教会そっくりに描かれていますが、
遠近法の操作や不要なものを構図から外すことによって
実際よりもより広々とした空間を作り出しています。
個人的に気になったのはいずれの作品にも教会内を走り回る犬が描かれていることです。
当時は犬も自由に教会へ入ることが出来たのかと思うと
どことなく微笑ましい気分になります。

デルフトの景観図といえばフェルメールも描いていますが、
他のデルフトの画家たちもそれぞれの視点で景観図を描いています。
フェルメールの作品ほどではありませんが、
いずれも空の面積が大きく取られ、
オランダという国が低地にあって
スカイラインに山や丘がほとんど入ってくることがないということが
よくわかります。

フェルメールより少し前にデルフトで活躍した画家がカレル・ファブリティウスです。


ファブリティウス 『自画像』

ファブリティウスはレンブラントの弟子の中でも最も才能ある人物の一人といわれます。
この作品もかつてはレンブラントのものと考えられていましたが、
現在ではファブリティウスの作品とされています。


ファブリティウス 『歩哨』

うなだれる姿の歩哨も印象的なのですが、
何より心に残るのが「忠実」を象徴する犬の姿です。
静かにたたずむ姿がどことなく昔懐かしい「ビクター犬」を思わせます。


ファブリティウス『楽器商のいるデルフトの眺望』

これは本の図版などでもよく見かける作品ですが、実物を見たのは初めてです。
もっと大きな作品を連想していたのですが、意外に小さな作品で驚きました。

ファブリティウスはデルフトで起こった火薬庫爆発事故で死亡し、
作品の多くもそのときに失われていますが、
残された数少ない作品はどれも質の高いものです。
今回ファブリティウスの作品をまとめて見る機会が出来て本当に良かったと思っています。


ピーテル・デ・ホーホ『訪問』

デ・ホーホはフェルメールとほぼ同時代にデルフトで活躍した画家です。
『訪問』も地図や絵画の掛けられた室内で談笑する男女というのは
フェルメールの多くの作品と共通するものですが、
フェルメールの作品がどちらかといえば構成や色彩を重視した「純粋絵画」という印象なのに対し、
デ・ホーホの作品は「人間ドラマを絵画化した」雰囲気がします。


ピーテル・デ・ホーホ『幼児に授乳する女性と子供と犬』

フェルメールの風俗画には子供は全く登場しませんが、
この作品を始めデ・ホーホの作品には数多くの子供が登場します。
「授乳」というきわめて人間的な姿を描いたところに
デ・ホーホが「人間」「生活」をどのような視点で見ていたのかということが
なんとなく伝わってくるように思えます。

この後フェルメールの7点の作品が紹介されているのですが、
そちらは次の記事にしたいと思います。

フェルメール後のデルフトの画家の作品も展示されていますが、
オランダ経済が不調になってきたこともあり、
同じような風俗画でもそれまでの作品とは微妙に雰囲気が変わってきています。
登場人物の身なりなどを見ても新しい時代が近づいてきていることを感じ取れます。

17世紀デルフトの画家たちの描くものには
煌びやかな作品はほとんどありませんが、
目を見張るものが数多くありました。
「神」のためではなく「人」のための芸術がそこにあるという印象です。
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