FC2ブログ

Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2008年12月の記事

有翼の童子


ラファエロ サン・シストの聖母(部分) 1513頃

「天使」を描いた絵画として多くの人がまず連想する作品の一つです。
『サン・シストの聖母』という作品名を知らなくても、
この丸々とした幼児の姿の二人の天使の姿を知らない人は
少ないのではないかと思います。

伝統的に天使は彼らの持つ豊かな能力を象徴する意味をこめて
若さの盛り「青年」として表現されていましたが、
ルネサンス以降天使の「見た目」年齢は低年齢化していき
少年・少女の姿で描かれるようになります。
そしてプットの登場でますます天使の低年齢化が進みました。

プットはギリシア神話のエロス(クピド)から派生したものですが、
それがキリスト教美術にも取り入れられ、
天使として描かれるようになりました。
プット(putto)とはイタリア語で「幼児」を意味しますが、
美術においては神話画や宗教画に登場する有翼の童子をさす言葉として用いられます。


マンテーニャ ゲッセマネの祈り(部分) 1460頃

童形の天使が登場する早い作例です。
祈るイエスの前に現れた五人の天使はそれぞれ十字架など受難の象徴を手にしています。
子供の姿をしているにもかかわらず威厳ある天使たちです。


ロッソ・フィオレンティーノ 奏楽天使

フィオレンティーノはマニエリスムの画家で
後にフランスに招かれ、フォンテーヌブロー宮殿の装飾画などを制作しました。
リュートを弾く天使はただ愛らしいというよりも
どこかあだっぽさを感じる瞳をしています。


グイド・レーニ マグダラのマリア(部分)

バロック時代になると一層プットの登場する作品が多く描かれるようになります。
こちらのレーニのプットは童子らしい愛らしさとともに
天上の存在としての気品も兼ね備えていると思います。


ムリーリョ 無原罪の御宿り(部分)

ムリーリョの描く無原罪の御宿りのマリアの周囲には
常に多くのプットが付き従っています。
薔薇や百合などマリアの象徴を手にする愛らしい幼児たちは
マリアの無垢な美しさを一層ひきたてています。

このように盛んに描かれたプットですが、
崇高な宗教的場面に登場する本来神聖であるはずの天使が
赤ん坊のような姿で描かれることに
眉をひそめる神学者もあったといいます。
しかし、これらの愛らしい天使たちは
現代人がイメージする「天使」の原型の一つとなり、
後代に与えた影響は大きなものであるといえます。

スポンサーサイト