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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

2014年05月の記事

平山郁夫展―文化財赤十字への道―

平山郁夫展―文化財赤十字への道― 4月8日~6月1日 広島県立美術館

5月初めに広島へ行ったときに見てきました。
広島県瀬戸田町(現:尾道市)出身である平山郁夫の没後初となる広島での回顧展です。
展覧会では主に広島県立美術館と平山郁夫シルクロード美術館所蔵の作品が出展されています。

第1章 原風景
1940年代から50年代にかけて描かれた初期の作品群です。
故郷である瀬戸内の風景やそこに生きる人々などが量感豊かな筆致で描かれています。
私は初期の平山作品を見るのは初めてだったのですが、
60年代以降の作品とは題材も絵のタッチもかなり異なる印象を受けます。

第2章 仏教伝来
平山は1960年代以降仏教伝来をテーマとした作品を描き始めます。
筆致もそれまでの明瞭な輪郭を持ったものから薄靄に煙るようなものに変化し、幻想的な様相を見せるようになります。
一般的に「平山郁夫」と言われてイメージする作品が描かれるようになるのがこのころからです。

第3章 シルクロード
1970年代から平山は自分の足で仏教伝来の道、いわゆるシルクロードの取材を始めます。
平山の足跡はパミール高原、フンザ渓谷、ガンダーラ、楼蘭、敦煌、雲崗などいわゆる「西域」から
ペルセポリス(波斯黄堂旧址)、パルミラといったシルクロードの西方、
さらにクレタ島、アッシジなど地中海世界を経て、最終的にはシルクロードの終着駅と称される奈良に至ります。
「仏教伝来の道」を超えて広く人類の歴史をたどる道を旅した様子がしのばれます。

第4章 文化財保護活動
1980年代以降、アフガン紛争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争などシルクロードをめぐる国々で紛争が相次ぎ、
それにより破壊されたり、本国から流出した文化財は多数に上ります。
平山は貴重な文化遺産を後世へ守り伝えるため「文化財赤十字」構想を提唱し、様々な活動を行っています。
ここでは文化財保護の過程で収集された文物や壁画や遺跡の模写が展示されています。

第5章 日本の美、平和への祈り
主に1990年代以降の作品で構成されています。
晩年平山は日本の美しい風景や身近な草花を多く描きました。
この章で展示されている《広島生変図》は平山が原爆を主題とした唯一の作品で、
渦巻く紅蓮の炎の中、宙に坐する不動明王が描かれています。
人々の姿など直接原爆の惨禍が描かれていないにもかかわらず
不動明王の姿によって戦争に対する怒りと平和への祈りが表されていると思います。
《祈りの行進 聖地ルルド・フランス》は最晩年の作品で、
人々の祈りの姿の普遍性が表現されています。
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天使がやってきた

わが家に天使がやってきました。
DSC02623.jpg

名前は「たま」(正式名は「たまこ」)です。

以前にも「タマ」という猫がいたのですが、
そちらは正式名「玉之助」でカタカナの「タマ」なのに対し、
こちらはひらがなの「たま」です。

子猫がわが家にやってくるのは十数年ぶりなので
(金さんは結構大きくなっていた)
本当に嬉しく思っています。

よく食べ、よく眠る小さいお嬢さんです。
(さっちゃんは大きいお嬢さんになりました)

華麗なる西洋絵画の世界展

女性像と日々の営みで綴る 華麗なる西洋絵画の世界展―バロック絵画からバルビゾン派まで
2014年4月26日~6月15日 ひろしま美術館

山形県の山寺後藤美術館所蔵の西洋絵画の展覧会です。
山寺後藤美術館はバロックからロココおよび19世紀アカデミスム絵画では国内有数のコレクションを持っています。

「神話・聖書・文学」
「美しさと威厳」
「静物~見つめる」
「風景と日々の営み」
という4つのテーマに分けて展示が行われていました。

実は2006年に愛媛県美術館で開催された山寺・後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展を見ていて、
今回の展示作品も大半は見たことのあるものでした。

以前感想を述べたことのある作品以外で印象に残った作品について述べてみたいと思います。

サッソフェラート《祈りの聖母》
サッソフェラートは17世紀イタリアの画家です。
静謐で穏やかな佇まいの聖母像は当時全盛だったバロック様式とは異なり
古典的で端正なタッチで描かれています。

ゴッドワード《古典的な美しい女性》
ゴッドワードは19世紀末から20世紀初頭にかけての英国アカデミー派の画家です。
古代ローマの衣装を纏う豊かな黒髪に濃い眉・黒い瞳の美女の姿は
レイトン《パヴォニア》や、アルマ=タデマの描く古代の女性像に通ずるものがあります。

ブーグロー《愛しの小鳥》
羊飼いや労働をする少女など庶民の少女を多く描いたブーグローですが、
この作品では珍しく上流階級の少女を描いています。
愛らしさと気高さを併せ持つ少女が魅力的です。

カバネル《エコーの声を聞く》
美少年ナルキッソスに恋い焦がれ、ついに声のみの存在となってしまったニンフのエコー、
そのエコーの声に耳を澄ます娘の姿が描かれています。
彼女の眼差しは清純無垢というよりどこか官能性を帯びていて、
「ファム・ファタル」的な魅力もはらんでいます。

4つのテーマの一つが「美しさと威厳」なのですが、
ミレイ《クラリッサ》や、ポインター《ミルマン夫人の肖像》など、
まさしくこのテーマにふさわしい作品だと思いました。
(この2点については以前感想を述べています。)