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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

世紀末の赤毛連盟


世紀末の赤毛連盟―象徴としての髪 高橋裕子

先日東京で買った本です。
「象徴としての髪」というサブタイトルに心惹かれました。
解かれた髪と結い上げられた髪が意味するもの、
髪を梳る姿や化粧する姿の女性像など
主にラファエル前派や世紀末象徴主義において
「女性の髪」がどんな意味を持っているのか様々な視点から考察されています。

ホルマン・ハント描く逆立つ髪のシャロットの女や
美しさを誇った髪を蛇の姿に変えられたメデューサなど
これまで私が関心を持っていたことについて詳しく述べられていて
大変興味深く読み進めました。

古来ヨーロッパでは「赤毛」は好ましいものではないと考えられていましたが、
19世紀後半にはラファエル前派の芸術家たちによって
「赤毛」に新たな美が見いだされました。
特にロセッティは豊かな赤い髪に魅了されており、
彼のモデルを務めたエリザベス・シダルやアレクサ・ワイルディングは
いずれも赤毛の女性です。
そして彼の後半生において重要な位置を占めた女性ジェイン・モリスは
実際には黒に近いダークブラウンの髪の女性でしたが、
その彼女ですら時に赤い髪で描かれることがありました。
冒頭の作品は『プロセルピナ』の別バージョンですが、
ここでのジェインは赤い髪をしています。

そしてラファエル前派の画家たちが賞賛した「美女」というのも
当時の一般的な美女の規範から外れたもので、
著者はそれらの「美女」を「醜いあひるの子」と呼んでいます。
芸術家たちが「醜いあひるの子」たちを美しく描き出したことによって
彼女らは「白鳥」として世間一般に受け入れられるようになったのです。

この本で取り上げられている絵画作品の多くはヨーロッパ絵画なのですが、
「化粧する女」「髪を梳く女」などの題材で日本の浮世絵や近代日本画も取り上げられていて、
日本とヨーロッパの女性観の違いなども概観することが出来ます。

更に少女漫画の源流をラファエル前派やアール・ヌーヴォーなどに求める考察も
とても面白く読みました。

私が美術好きになった当初は世紀末象徴主義には関心がなかったのですが
(というよりもそういう知識がなかった)
世紀末の「ファム・ファタル」の髪に絡め取られ
世紀末世界から抜け出せなくなってしまったようです。
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