FC2ブログ

Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

憂い顔の美少年


ボッティチェリ マニフィカトの聖母(部分) 1482


ボッティチェリの全盛期の作品に登場する天使には
危うい魅力を兼ね備えた「美少年」でありながら
人ではない超越的存在であるという
「これぞルネサンスの天使」といった趣を感じます。

ボッティチェリの初期の作品に登場する天使は
比較的低年齢の少年の姿で描かれており、
愛らしい姿をしてはいますが、
いわゆる「美少年」という雰囲気ではありません。


『歌う天使と聖母子』1483頃

聖母の純潔を象徴する百合を手にして聖歌を歌う天使たちです。
それまでボッティチェリの描く天使は翼を持っていましたが、
ここに描かれた天使たちは翼をつけていません。
天使の(見た目)年齢もそれまでより高くなり、
妙齢の少年たちの聖歌隊といった雰囲気になっています。


『マニフィカトの聖母』1482

天使が手にしている書物にマリアがペンで記しているのが
題名の由来となった「マニフィカト(マリア頌歌)」です。
マリアを讃える王冠を捧げ持つ天使たちの横顔も大変美しいのですが、
特に心惹かれるのはマリアの前に控える3人の天使です。
顔を寄せ合い眼差しを交わす姿にえもいわれぬ魅力を感じます。
この世のものとは思えないような美しい「少年」を
「天使」という形を借りて描き出したのではないかと思えます。


『柘榴の聖母』1487頃

両端の天使は聖母の象徴である白百合と赤い薔薇を持っています。
こちらも『歌う天使と聖母子』同様聖歌を歌う天使たちです。
互いに体を寄せ合って歌う姿というのは他の作品と共通するのですが、
天使たちの表情にはどこか憂いを感じます。

1490年代以降ボッティチェリの作風は神秘性を増し、
天使の姿も硬質で険しいものに変わっていきます。
晩年の代表作『神秘の降誕』で天上を輪になって舞う天使たちが描かれていますが、
その姿は神の子の降誕を寿ぐというイメージからは程遠いものとなっています。

『マニフィカトの聖母』に描かれた青春の息吹を感じさせる天使の姿は
フィレンツェ・ルネサンスの黄金時代の象徴のように思えます。
スポンサーサイト