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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

薔薇空間

薔薇空間 宮廷画家ルドゥーテとバラに魅せられた人々 愛媛県美術館

おおデュオニソスよ、
我にバラの冠を与えたまえ、
さすれば竪琴を奏でながら、
その冠を頭に抱き、
極上の乙女たちともども、
喜んで貴殿の神殿の御前で舞って進ぜましょう。
アナクレオン 抒情詩5

上記の詩は『バラ図譜』の扉絵に添えられたものです。
全3巻169枚の図版からなり、
その原画を描いたのが「バラのラファエロ」と称されるルドゥーテです。

今回の展覧会では『バラ図譜』の図版全169点をはじめ、
パーソンズ『バラ属』の図版、二口善雄『ばら花譜』の原画
斎門富士男撮影のバラ写真によって、文字通り「薔薇空間」が構成されています。

ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ 『バラ図譜』(初版:全3巻 1817-1824)

19世紀初頭フランスにおいて「バラ・ブーム」が起こります。
古来ヨーロッパで栽培されてきた品種に加え、
アジアやアメリカから多くのバラがもたらされ、
それらと交配されて次々と新しい品種が生み出されていきました。
そういったバラを記録するために作成されたのが『バラ図譜』です。

ルドゥーテのバラの絵は植物学的正確性と芸術的な美しさを併せ持ち、
まさに「バラの肖像画」と呼ぶにふさわしいものといえます。

I 古代種
ギリシア・ローマ時代からの系統。
II ケンティフォリア系及びモス系
16世紀頃出現したとされる系統。
III チャイナ系
18世紀~19世紀に中国からヨーロッパにもたらされた系統。
IV オールドローズの基本種
古代種やチャイナ種が自然交配及び意図的に交配されて作出された系統。
V ワイルドローズとその派生種
北半球に自生する野生種とその変異種や自然交配種。
『バラ図譜』に描かれた169種のバラを園芸的に分類して展示してありました。
キャプションも絵の技法についてのものとバラの品種解説の二つがつけられ、
非常に詳細で分かりやすくなされています。

ビロードのような質感で描かれた立体的なバラの絵の数々に
まるで本物のバラをそのまま紙に閉じ込めたように感じました。

アルフレッド・パーソンズ 『バラ属』(1910-1914)
アルフレッド・パーソンズ(1847-1920)は庭園画家として19世紀英国で知られた人物です。
彼は1892年に来日し、各地の風景や花を描いた『日本見聞記』を著しています。
園芸家エレン・ウィルモットの依頼で描かれた『バラ属』132点の図版の一部が展示されています。

ルドゥーテと比較するとやや硬質な印象を受けますが、
植物学的には非常に正確で緻密な画風がパーソンズのバラといえるでしょう。

二口善雄『ばら花譜』(1983)
二口善雄は戦前から文部省の理科図集に精密な植物画を制作し、
戦後も様々な植物図譜の図版を描き、
日本のボタニカルアートの第一人者として活躍しました。

『ばら花譜』はバラの育種家鈴木省三の依頼によって制作されたもので
野生種・オールドローズ56種、モダンローズ77種が掲載されています。
この展覧会では野生種・オールドローズを描いた16枚の原画が展示されています。

非常に細密に描かれているのですが
決して硬い筆致ではなく、柔らかさ瑞々しさを感じます。

斎門富士男の解放されたバラ
人物写真に定評のある写真家・斎門富士男による「バラの肖像写真」です。
大型のパネルにプリントされた極彩色のバラの数々は圧倒する勢いで見るものに迫ってきます。
美しさよりも生命力逞しさをより強く感じる写真です。

今回の展覧会では様々な形でバラの魅力を感じることが出来ました。

愛媛県美術館では期間限定で中庭にバラ園を作ってルドゥーテのバラの実物を展示したり、カフェを開設するなどのイベントを実施するのですが
残念ながら今回は日程が合いませんでした。
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