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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

海の呪文


ロセッティ 海の呪文 1875-77


リュートが林檎の木陰に掛けられ、
閃くような指が弦のあいだに甘美に張られた呪いを織りなす。
荒々しい音楽が高まるにつれ、
海鳥が木の枝を目ざして海を離れる。
だがいかなる音に彼女は身をかがめて聞き入っているのか。
どのような地獄の深淵の囁きを彼女は聞くのだろうか、
風に沿って、入江に沿って、
地球の何処から届く響きに応えながら。
ロセッティのソネットより


一見すると「海」のイメージがあまり感じられない作品ですが、
ここに描かれているのは海の精セイレーンです。

この作品は『ヴェロニカ・ヴェロネーゼ』の対作品として制作されたものです。

林檎の木に結わえた楽器を爪弾くセイレーンですが、
楽器は日本の琴のようなものが描かれています。
ロセッティは『青の閨房』においても琴を弾く女性を描いています。
林檎はセイレーンの持つ誘惑の力の象徴です。

楽の音に惹かれてやってきた海鳥は
セイレーンの誘惑によって死に至った船乗りの魂を象徴しています。
花冠のキャロライン・ローズは愛らしい花ですが、
その花言葉は「愛は危険」であり、
花冠を身につけたセイレーンの危険な魅力を表しています。
左隅に咲く赤い花は金魚草です。
この花の英名「スナップドラゴン」は蜜蜂が花の中に入って蜜を吸う姿を
蜜蜂が竜に飲み込まれたと見立てたもので、
蜜蜂(船乗り)を呑み込む竜(セイレーン)という彼女の本質を示します。

画面いっぱいに描かれたしなやかな姿態のセイレーンと
咲き誇る花々とたわわに実る林檎によって
むせ返るように濃厚な愛と誘惑の魔力が表現されています。
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