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美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

琳派 京を彩る

琳派 京を彩る
10月10日~11月23日 京都国立博物館 平成知新館

1615年、本阿弥光悦が鷹峯の地を拝領し、光悦村を開いたことから
今年は琳派誕生400年とされています。

「琳派」を総合的に展観する展覧会が京都で開催されるのは今回が初めてで、
光悦・宗達・光琳・乾山・抱一と
世代を超えて受け継がれた美意識によって生み出された芸術品の数々が勢揃いしていました。

第1章 光悦 琳派誕生
書状、楽茶碗などで光悦の足跡をたどる構成となっていました。
光悦筆・立正安国論(妙蓮寺所蔵)や光悦作・花唐草螺鈿経箱(本法寺所蔵)など、
光悦と法華宗との深いつながりを示すものもありました。

第2章 光悦と宗達 書と料紙の交響
書家としての光悦は王朝風の華麗な下絵が描かれた料紙を用いた巻物や色紙を多く手がけました。
それらの料紙に下絵を描いたのが俵屋宗達です。
光悦筆・宗達画の和歌色紙や巻断簡を中心に展示されていました。
特に見ごたえがあったのは『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』で、
金泥の地に描かれた銀色の鶴の群れは躍動感にあふれています。
鶴たちは存在感がありながらも決してしたためられた文字の妨げになっておらず、
章タイトルの通りの絶妙なハーモニーを醸し出しています。

第3章 宗達と俵屋工房
宗達は「俵屋」という屋号で工房を構えていたと考えられています。
始め俵屋では扇絵を手掛けていましたが、
次第に屏風絵、襖絵、杉戸絵などの大型の絵も描くようになっていきました。
『扇面散屏風』(伝宗達筆)
物語の一場面や、名勝を描いた扇絵を屏風に張り付けたもので、
それぞれの場面は独立したものですが、全体は見事に調和を保っています。
『芥子図屏風』
写実的に描かれた芥子の花がモダンな雰囲気で洋間にも似合いそうでした。
『菊簾図屏風』
簾が屏風にはめ込まれており、
残りの空間に巧みに菊の花が描かれています。
菊花は極めて厚塗りで仕上げられていて本物の花のようでした。
『色絵芥子文茶壺』(野々村仁清作)
茶壺といえば茶色のシンプルなものが多いのですが、
こちらは赤や紫・金色の芥子の花々が描かれた華やかなもので、
絵画をそのまま壺にしてしまったかのようでした。

第4章 かたちを受け継ぐ
琳派は直接の師弟関係を持たず、遺された作品を通じて世代を超えて継承されました。
それを端的に表すのが、宗達・光琳・抱一の『風神雷神図屏風』です。
光琳は宗達の風神雷神図を写し、抱一は光琳の風神雷神図を写しました。
また酒井抱一は光琳の『三十六歌仙図屏風』を模写しただけではなく、
四季の花々を描いた屏風に三十六歌仙の肖像と和歌の色紙を張り付けた
『三十六歌仙図色紙貼交屏風』も制作しています。

第5章 光琳 琳派爛漫
琳派誕生から約100年後の元禄時代に活躍したのが尾形光琳です。
光琳は宗達以来の装飾的なやまと絵の技法と
雪舟の水墨画や狩野派の豪壮な画風を融合した独自の様式を確立しました。
大胆な構図の『白楽天図屏風』
繊細な筆致と伸びやかな構図の『夏草図屏風』
対象を写実的に写し取った『鳥獣写生絵巻』からは光琳の観察眼を感じ取ることができます。
『竹虎図』は画面の半分を猫のような愛らしい虎が占めています。
虎の量感から衝立のような大きめの絵画を連想していたため、
この作品の実物を見たとき意外に小さいことに驚きました。

第6章 くらしを彩る
琳派の芸術家たちは金工・漆芸・陶芸など様々な暮らしを彩る工芸品を生み出しました。
作り出した工芸意匠はその後の芸術にも多大な影響を与えています。
『八橋蒔絵螺鈿硯箱』(尾形光琳作)
螺鈿で形作られた杜若の花、金蒔絵の杜若の葉、黒漆の八橋
具体的な情景描写は一切用いずに伊勢物語の東下りの段を表現しています。
『色絵氷裂文角皿』(尾形乾山作)
20世紀抽象画を思わせる図案が斬新です。
『色絵菊図向付』(尾形乾山)
白い小菊の形に作られた愛らしい器です。

第7章 光琳の後継者たち 琳派転生
光琳は直接後継者を育てることはありませんでしたが、
その画風を慕って多くの画家が活躍することとなりました。
中でも酒井抱一は光琳の画業を顕彰し、琳派の系譜を初めて明確に跡付けました。

琳派の様式は江戸時代を通じて代々受け継がれただけではなく、
近代以降も多くの芸術家が「琳派デザイン」の影響を受けています。
今も息づく琳派の系譜をじっくりと鑑賞できる内容で大変見ごたえのある展覧会でした。
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