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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

メデューサ Famme Fatale vol.1


フレデリック・サンズ メデューサ


それはあまりにも魅力ある恐怖
そして限りなく変化する鏡
そこにあらゆる美と恐怖を映し出す
あの濡れた岩で空に穴が開くほど見つめている
髪の毛が蛇でできた女の顔

シェリー


ギリシア神話に登場するゴルゴン三姉妹の怪物の一人がメデューサです。
メデューサとは「女王」を意味する名前で、
元来は古い大地母神であったものが
ギリシア神話に組み込まれたものと考えられています。
大きく見開いた目や口、生きた蛇の髪の毛といった彼女の異形の姿を見たものは
恐ろしさのあまり石になってしまうのです。
そんな恐ろしいメデューサですが、
ギリシアでは魔よけとして建物の破風や楯にその顔を掘り込み、
またお守りや祭祀の際の仮面に用いました。
あまりの恐ろしさに悪鬼すらも退散すると考えられたようです。

19世紀英国の画家の描くメデューサは
カラヴァッジョやルーベンスといった
バロック期の画家の描くメデューサと比べると
ずいぶん美しく描かれていますが、
正面を見据える目と生き物のようにうねる髪からは静かな戦慄を感じます。


ロセッティ Aspecta Medusa


もとはメデューサは美しい乙女で、特にその髪の毛の美しさは抜きん出ていました。
海の神ポセイドンはメデューサと恋に落ちますが、
あるときアテナ女神の神殿で激しく愛を交わしてしまいます。
純潔なアテナ女神は自分の聖域を汚されたことを激しく怒り、
メデューサを恐ろしい怪物の姿に変え、
美しい髪を生きた蛇の姿にしてしまったのです。

この後英雄ペルセウスがアテナ女神の助力を受け、
メデューサの首を刎ねてしまいますが、
この時流れた血から生じたのが
ポセイドンとの間にもうけた子である天馬ペガサスです。


バーン=ジョーンズ 不吉な首


メデューサの首は死後も魔力を失うことなく、見るものを石に変えてしまいました。
帰途ペルセウスはエチオピアの王女アンドロメダを救い、
彼女を妻としてギリシアへ伴います。
バーン=ジョーンズは妻にメデューサの首を水鏡に映して見せる様子を描いています。
ここに描かれたメデューサは非常に優美で
恐ろしい魔物というよりも、ファム・ファタルの末路といった雰囲気を感じます。

フロイトはメデューサの首を女陰の象徴と考えました。
女性の秘めた部分を見たいという欲望と、
それを見ることへの(社会的タブーを犯すという意味も含めた)恐怖が
メデューサ神話にに内在していると考えたのです。
それは見てはならないものであるからこそ魅惑的なものであり、
一度味わってしまったらその虜となってしまうのです。

女性の秘所は生命を産み出す場所であると同時に
全てのものを呑み込み、貪りつくす場所であるとも考えられました。
そのような力を持つ大地母神への憧れと畏れが
恐ろしくも魅惑的なメデューサという怪物を作り出したのだと思います。


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