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Windflowers

美術・猫・本など興味ある事柄や日々の徒然を綴るブログです。

シレーネたち

妖しいシレーネは 本の
伝えるところでは 美しい女怪
ふか海に その魔女は住み、
ヘソから上の 胴と顔は さながら
うら若い 乙女の すがた
ヘソから下は ひとも知る
魚のすがた 天の調べかとおもう
妙なる歌を こよなく美しい
音楽的で うっとりする旋律(しらべ)で
うたうため 沖ゆく舟乗りは
わけもなく
その魅惑のとりことなる。

J.ガウワー「恋人の告白」より



モロー シレーネたち

『詩人とセイレーン』の魔性に満ちたセイレーンとはやや異なり、
魅惑的な水の精といった趣の美しいシレーネ(セイレーン)たちです。
乳白色の肌や長い金髪はモロー描く『ガラテイア』に通じるものがあります。
彼女らの両足は鱗に包まれひれ状になってはいますが、
腰や腿は人間の女と同じ形をしています。
これは彼女らが受け入れることの出来る性を持つ証です。

夕闇迫る空や水辺を舞う白い鳥、そして断崖という情景は
モローが幾度となく描いたサッフォーの死の場面を彷彿とさせます。

妙なる歌声を響かせるシレーネたちと
「詩」を体現する「巫女」としてのサッフォーには
どこか共通するものがあるのかもしれません。
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